動物武術の虎鷹拳院日誌

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勁力への旅・その二

*ある日、宋光華先生の近所に棲む、やはり宋鉄麟の弟子だった先生に招かれました。そして、宋氏形意拳の極意は、「静」だと教わりました。

*もちろん、そんなこと言われてもチンプンカンプンです。今考えると、静は動の反対だから、姿勢のことです。つまり、静とは姿勢の勁力のことです。

*ともかく、宋氏形意拳の五行拳を習ってはみたのですが、当然、全く撃てません。自分の崩拳では小学生も倒せません。もちろん、暴力ならば倒せますが、それでは武術の意味がありません。暴力が通用するのは、体格差が著しい場合だけです。

*それ以前に、劈拳が全く駄目です。どうしようもありません。劈拳は形意拳の母拳といわれています。でも、ある日気がつきました。形意拳の華は崩拳です。五行拳も崩拳で統一してしまえばいいのです。すると、劈拳は崩拳の変形となります。これで上手く撃てるようになりました。鑽拳も崩拳の変形です。炮拳はそもそも崩拳と同じです。上の手が加わるだけです。

*ところが、宋氏形意拳の横拳は特殊です。横拳には熊の2号が必要です。

*しかし、ある日気がつきました。熊の1号も2号も、体幹の絞りとしては同じことです。そこで、熊の1号と2号を統一してしまいました。そして、崩拳に横拳の要素を加えてみました。これが大成功です。崩拳の力量が倍増しました。

*ここまでは、私の独断です。太谷県を訪ねてからはるかに年月が経っていました。

*当時解ったことは、私の六合歩(三体式) は浮いているということです。浮きっぱなしです。穏やかでもないし、安定もしていない。フワフワと空中浮遊しています。

*歩けば、さらにフワフワと浮きます。五行拳を撃つ、なんてレベルではありません。最低です。

*そこで、とりあえず、歩くのはあきらめました。六合歩の定歩でひたすら五行拳を撃ちます。

*そうこうしているうちに、拝師の日が来ました。通常は、二年間以上練習した人が拝師を許されます。私は初めての外国人ということで、大サービスというわけです。

*取り仕切るのは、宋光華先生の兄弟子、趙永昌先生です。もちろん、私が拝師するのは宋光華先生です。拝師の儀式がありまして、趙永昌先生が宋氏形意拳の歴史を読み上げます。私は宋光華先生に、三回お辞儀します。

*その後、中庭で演武会です。宋鉄麟に関係する様々な先生が来ていました。そして、宴会です。テーブルと椅子は近所のレストランから借りてきました。料理と酒の費用は私が出します。(当時は物価が安かったので、それほど負担ではありませんでした。今だったらヤバいところです。)

*拝師したのは6月4日、北京は流血の日曜日でしたが、ここ太谷県は遠く離れた田舎です。北京の情勢は全く報道されません。田舎は平和そのものです。

*一週間経ったら、テレビのニュースが流れました。反革命暴乱と決めつけられました。長安街を引き上げる学生デモ隊が写っていました。映像は人民解放軍撮影だそうです。ところが、音声が全くありません。銃の発砲音を消したわけです。

*ニュースでは、人民解放軍のトラックを数十台燃やしていました。学生デモ隊が放火したそうです。解放軍が自分たちで自分たちのトラックに放火したのがミエミエです。笑ってしまいました。

*中国共産党政権を打倒しようとした反革命暴乱と決めつけられましたが、学生にそこまでの意図はありませんでした。せいぜい共産党の穏健派に期待しただけでした。それが中途半端になった原因です。まだ毛沢東神話が少し生きていました。

*その後、元嫁さんの故郷=安徽省合肥市へ、太源から飛行機に乗り込みました。合肥市でしばらく過ごしてから、上海へ行き、日航機で東京へ帰りました。帰りの飛行機は大型のジャンポでしたが、乗客は全部で4人だけ。乗務員のオネーサン、「好きな席に座れ」とのこと。外国人はみんな逃げた後でした。

*日本のヤクザ屋さんが飛行機の椅子を倒して寝ていました。中国の若い女性を日本へ送り、妾として売りつける仕事をしているそうです。元嫁さん、当時は美人でしたから、「どうだい、売れるよ」なんてヤクザ屋さん言ってました。「なんて言ってる? 」と元嫁さんに聞かれましたが、まさか翻訳するわけにもいかないので困りました。

*宋氏形意拳には、震脚はもちろん、沈墜勁も十字勁も纏絲勁もありませんでした。当時の自分としては、取っ掛かりがありませんでした。そこで、六合歩の定歩でひたすら五行拳を撃ちました。解っていたことは、力を入れると駄目になる、ということだけ。そこで、ひたすら力を抜く練習をしました。しかし、勁力はありませんでした。

*2年後、上海郊外で心意六合拳を学習しました。結局、その鷹抓把で姿勢勁力のヒントをつかみました。勁力の根本は足にありました。その足は、地面を蹴らない足、でした。地面を蹴らない足が勁力を生み出します。その足は、蹠行性(せきこうせい) ではなく指行性です。

*これは体重に何も足さない、ということです。それが姿勢の勁力です。

*普通の勁力は、体重に地面を蹴る足と力を足します。それが、沈墜勁・十字勁・纏絲勁となります。しかし地面を蹴ると身体は浮きます。だから、沈むしかありません。

*勁力の無い私は心意六合拳に賭けました。これで駄目なら武術そのものを止めてしまおう、と決心しました。私は38歳になっていました。1991年の春でした。

*心意六合拳において、宋氏形意拳の熊の1号・2号がたいへん役に立ちました。熊の1号・2号とは、体幹の絞りのことです。すなわち、幻の龍腰のことです。龍腰という言葉はあっても、誰も明らかにできませんでした。私は宋氏形意拳の熊の1号・2号から、龍腰を解明しました。
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by tiger-hawk | 2016-01-31 05:08 | 勁力への旅

回族心意六合拳・宋氏形意拳・動物武術・虎鷹拳院・姿勢勁力・藤松英一


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