動物武術の虎鷹拳院日誌

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勁力への旅・その五

*当時の張克強先生の自宅は、上海郊外の農村地区にありました。小さな運河には、アヒルが20羽位、楽しそうに泳いでいました。ちょうど春でしたので、見渡す限り菜の花畑が広がっていました。水平線まで黄色い花が咲き乱れ、それは美しい江南の田園風景でした。

*山西省だと、こうはいきません。畑はあっても荒涼とした風景が広がります。まさに、黄土平原が広がります。空気は乾燥して、半分砂漠みたいな感じです。

*江南の春・・・そんな上海郊外の風景は、現在は一変しました。コンクリート製の未来都市? みたいな風景が広がります。未来都市? にはもちろん土の匂いも人間の匂いもしません。それを見ると、文化は滅びるのだなあ、と悲しい気持ちになります。

*先生の自宅は、敷地が150平方メートル位で二階建てのコンクリート製です。(隣の農家とはまるで違います。) 庭もあるので、そこで練習しました。先生、当時では珍しく自家用車を乗り回していました。ドイツのメーカーと提携したサンタナというクルマでした。

*どうしてお金持ちなの? 当時は全く気にしませんでした。なにしろ、心意六合拳を教えてくれればそれで満足、でした。たぶん、なにか財テクしていたのでしょう。当時は共産党の地方幹部たちが、こぞって起業している時代でしたから。(そんな起業家の地方幹部たちと、レストランの会食で同席させられたことがあります。) 

*先生、大学生の頃は、陶子鴻先生の師範代をしていたので、弟子が20人位いたそうです。当時は、警察学校勤務でしたから、弟子はいませんでした。近所にも武術をやっていることは秘密でした。

*上海で心意六合拳を練習するような若者は、繁華街でケンカするような乱暴な人が多かったそうです。もし、弟子が街で騒ぎを起こしたら、先生の警察学校教官の面子がまるつぶれとなります。責任問題になるかもしれません。というわけで、弟子はゼロでした。

*訓練は、歩型の鶏歩と、技では蛇行歩と龍形十字劈から始まりました。蛇行歩は心意六合拳としては珍しく定歩の練習があります。龍形十字劈は、いかにも古典的な技です。(龍形十字劈は背の高い人向けの技です。自分には向いていません。ちくわさんがやれば、ちょっと近寄れなくなります。)

*それから基本的な技として、鶏行歩、鶏撲食、単虎抱頭、鷹抓把、熊吊膀、猴縮身、龍形裹風、鶏形単把、などを訓練しました。

*一回目の訪問では、合計40個位の技を学習しました。先生としては短期間に全て教えてやる、という意図でした。

*もちろん、私は全ての技が撃てません。どれ一つも満足にできません。技の形を真似するだけでせいいっぱいです。それも、あやふやです。元々、悪い頭がさらにパニックを起こしました。そもそも、訓練に耐え得る筋肉がありません。下腿三頭筋も大腿四頭筋も貧弱でした。

*二週間過ぎると、私の膝は悲鳴を上げていました。必要な筋肉も無いのに、一日8時間以上の練習をしたためです。座った状態から立ち上がると、膝がギィギィと音を立てました。もはや、歩くのも辛くなりました。もっとも当時は、足首に体重を降ろす、なんてことには無知でしたけど。だから、膝に体重をかけていたわけです。

*先生は仕事があるので、早朝に少し練習、昼に少し練習、夜にしっかり練習、という具合でした。(昼は来たり来なかったり) 私はもちろん、やることありませんから、一日練習していました。

*本来は、鶏歩と弓歩をじっくりとやって、訓練に耐え得る筋肉を作ります。技もたくさんは要りません。2個位で十分です。だから、良い子は真似しないように。

*そんな具合でしたから、ケイリョク? 何それおいしいの? 心意六合拳で撃つ? 信じられなーい ! という状態でした。

*それでも排打功を学んだ時は悲惨でした。全身を撃たれてボコボコにされて、翌日の朝はベッドから起き上がれませんでした。あれ? 身体が硬直している? 30分かけてゆっくりとベッドから這い出ました。(カフカの虫状態です。) 

*とりあえず、夜行で上海から北京へ。(列車の中で、食べ物の無い私に同情してくれた中国の若者たちからサンドイッチを恵んでもらう。当時は7時間かかりました。) 元嫁さんと合流して、山西省太谷県へ。宋光華先生から、宋氏形意拳の十二形拳を学ぶ。

*北京へ戻り、中国武術研究院を訪問して、偉い先生たちの前で宋氏形意拳を披露させられる。(偉い先生たちが漢族なので、心意六合拳は見せない。) そしてまた上海郊外へ。張克強先生から心意六合拳の技の入り方を学ぶ。(これを知らないと、技だけでは実際には使えない。) 

*山西省では、祁県の戴龍邦の生家を訪ねたりしました。外国人としては初めてだそうです。その家は城のようでした。敷地は1000平方メートル。外壁は高い所で8メートル位。ほとんどの部屋は現在使われていません。戴氏心意拳は戴家では失伝していて、外部に伝わるとのこと。

*帰国してから、しばらく練習を休んで膝の回復を待ちました。(苛酷な旅で身体は疲れきって、寒気がしていました。) それから、技を絞りました。まず、一番簡単そうな鶏撲食です。これで歩法を学びます。

*龍形裹風などは撃てそうもないので、一年間以上放置しました。(何やってんだか ! )

*先生の技で、最高にダイナミックでカッコいいと感じたのは、まずは鷹抓把でした。で、鷹抓把を真似してやりました。これは盗んでやろう、と決心していました。

*そのうちに、鷹抓把の後ろ足と鶏撲食の後ろ足が同じだと気付きました。どちらも大きい歩幅を造ります。ところが地面を蹴っていません。足は伸びることなく、曲がったままです。弓歩状態になりません。

*陸上競技の短距離でも、アフリカのマラソン選手でも、大きい足幅になり、後ろ足は空中でほとんど伸びきります。空中で弓歩状態になります。(地上最速といわれるチーターでは、背中がしなり、前足も後ろ足も伸びきりほとんど水平になります。) ところが、心意六合拳では弓歩状態になりません。足は曲がったままです。(しかし、多くの心意六合拳は太もも=大腿直筋で地面を蹴ります。そこで蹠行性になります。)

*ここが、勁力発見の突破口になりました。しかし、一年以上かかりました。やっぱりアホです。

*地面は蹴らないのに、指行性状態になります。すると、下腿三頭筋で身体を支える結果となります。下腿三頭筋が覚醒します。これに、前腕の筋肉=鷹爪と、体幹の絞り=龍腰が加わります。体幹の絞りでは、宋氏形意拳の熊の1号と2号がたいへん役に立ちました。
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by tiger-hawk | 2016-02-06 11:34 | 勁力への旅

回族心意六合拳・宋氏形意拳・動物武術・虎鷹拳院・姿勢勁力・藤松英一


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