姿勢勁力の作製手順その二
<心意六合拳の指行性鶏歩>
*心意六合拳の鶏歩こそ、動物武術の指行性に気付いたそのものでした。その後ろ足の踵は地面から離れています。趾球と足指で着地しています。
*「骨から見る生物の進化」という美しい本に、「アナグマは蹠行性、つまり足の裏全体で地面を踏んで歩く。アナグマのような短く力強い足を持つのは、もっぱら地上を歩く動物や、地面を掘る動物である。チーターは指行性で、歩くとき地面に触れるのは地面に触れる指だけである。」と記述されていました。
*その本が切っ掛けで、動物の歩き方に、指行性、蹠行性、蹄行性(偶蹄目、奇蹄目) 、などがあることを知りました。蹄行性とは、足指の先だけで歩くことです。ですから、バレリーナも羊さんと同じ蹄行性となります。馬さんはそれを徹底して、中指一本で歩くようになりました。だから奇蹄目となります。馬さんの踵に相当する関節は、はるかに高いところにあるので、膝と間違えそうです。
*心意六合拳の鶏歩と鶏行歩の元となったニワトリ=鳥類は指行性です。鳥類の元となった恐竜も指行性です。そして、虎さん=ネコ科とイヌ科も指行性です。(ネコ科とイヌ科は祖先を同じにしています。)
*ヒトやサルは蹠行性となります。霊長類は樹上生活でしたので、蹠行性のほうが合っていたのでしょう。クマも蹠行性ですので重い身体ですが、後肢で立ち上がることができます。
*さて、心意六合拳の鶏歩です。体重のほとんどは後ろ足が支えています。その後ろ足の趾球と足指が支えています。踵を高く上げると、膝と太もも表=大腿直筋に体重がかかります。すると、勁力が発生することはありません。勁力が発生しないので、沈墜勁や震脚などの発勁動作が必要となります。そんな心意六合拳もあります。つまり蹠行性の心意六合拳ということです。ヒトは蹠行性なので、これは落とし穴として常在しています。蹠行性の形意拳も同様です。
*踵は地面と離れるけれども、低い位置にあると、足首が折れ曲がります。すると、下腿三頭筋に体重が降りてきます。足首は関節なので、筋肉の下腿三頭筋が体重を支える結果となります。すると、姿勢勁力が発生します。これが、鶏歩の勁力となります。
*姿勢勁力の条件としては、足首の折れ曲がりに、膝裏の折れ曲がりと鼠蹊部の折れ曲がりが加わります。三カ所折れ、となります。
*膝表が折れ曲がると、膝に体重がかかります。結果として膝を痛めます。膝表の折れ曲がりは避けて、膝裏を折り曲げます。
*鼠蹊部が伸びていると、太もも表=大腿直筋で立つ結果となります。完全直立の姿勢です。あるいは、のけぞった状態です。こうなると、姿勢勁力は発生しません。たとえ棒立ちでも、微妙に鼠蹊部は折れ曲がるようにします。すると、姿勢勁力が発生します。つまり、腰や背筋を伸ばした状態は間違いとなります。
*腰や背筋を伸ばすと、出っ尻となります。尻は収める必要があります。これは、腹横筋で腹を持ち上げるようにします。これを提肛と称します。
*これらの条件を鶏歩において満たす必要があります。独学で解決するのは困難なので、コーチに教わってください。
(註1) 蹠行性では姿勢勁力は発生しません。そのために、沈墜勁とか十字勁とか震脚とか、発勁動作を加える必要があります。姿勢勁力は姿勢だけで勁力が発生しているので、発勁動作は不要となります。
(註2) 鼠蹊部が伸びていると蹠行性となります。後ろ足の膝表が折れ曲がると前足が蹠行性となります。後ろ足の踵が高くなると、前足が蹠行性となります。どの場合も蹠行性となります。