小さい運動
*心意六合拳と形意拳には様々な傾向があります。そこで、静的勁力に的を絞ります。動的勁力については、他の人に任せます。
*山西省太谷県へ行った時、宋氏形意拳の拳理は「静」だ、という謎の言葉をもらいました。
*これは全く理解できませんでした。しかし、宋氏形意拳には、沈墜勁、十字勁、纏絲勁、震脚などはありませんでした。
*ところが、運動は動的です。静的運動なんかあるのか? あるわけありません。すると、静的勁力もありません。
*しかし、もっと小さい運動を想定します。それは、姿勢を保つことです。姿勢を保つことは、とても小さい運動です。重力に抵抗して、体重を支えます。それでも筋肉が働いています。
*発勁というと大きい運動を想像します。爆発といえば大きい運動だと考えます。
*しかし、小さい運動ならば、静的勁力が存在できそうです。
*小さい運動なので、姿勢を保つことなので、勢いに負けると困ります。勢いがあると、姿勢が崩れてしまいます。
*すると、勢いを殺す必要があります。だから、勢いが生じてはいけません。もちろん助走もいけません。
*すると、地面を蹴ってはいけません。すると、ウォーキングもランニングもいけません。
*それが、宋氏形意拳の六合歩、心意六合拳の鶏歩、です。
*重力に抵抗して体重を支えるのは、足首に近い下腿三頭筋です。その下腿三頭筋の伸張性収縮です。
*下腿三頭筋の伸張性収縮には、ある条件があります。それは前提条件です。それ無くしては、成立しません。
*それが指行性です。恐竜=鳥類=ニワトリ、ネコ科、イヌ科などの動物の指行性です。ところが、ヒトは蹠行性(せきこうせい) です。ヒトは踵を使う蹠行性なのです。
*私が、下腿三頭筋の伸張性収縮を教えても、みんな理解できませんでした。私はがっかりしました。でもそれは私が間違っていました。
*蹠行性の人に、いきなり下腿三頭筋の伸張性収縮を教えても理解できないのは当然のことなのです。私の要求が無理難題なのでした。
*蹠行性から指行性への変態が必要でした。それが、心意六合拳の鶏歩、宋氏形意拳の六合歩、の訓練です。
*心意六合拳の弓歩も指行性(隠れ指行性) です。ところが、一般の武術の弓歩は蹠行性なのです。だから地面を蹴ります。指行性の弓歩は、地面を蹴ってはいけません。
*動物の立ち方・歩き方に覚醒したのは、病気してからです。心意六合拳には素朴な動物生態論がありました。ここにヒントがありそうだと直感しました。
*そこで、図書館でシートン動物記を借りてきました。さらにシートン動物誌を集めました。たくさんの動物本と化石人類学の本を読みました。すると、動物の骨の本に、指行性の記述を見つけました。やっと答えが見つかりました。心意六合拳・鶏歩の後ろ足は踵が少し浮いています。これが指行性の証拠です。
*ところが、前足の踵は地面と接触しています。すると前足は蹠行性です。しかし,その前足には体重がほとんど載っていません。体重は後ろ足が支えています。地面と接触しているのは、足指と趾球です。ネコ科やイヌ科と同じです。
*しかしどうやってもヒトは蹠行性の骨格です。骨格を変えることはできません。ネコやイヌのように、踵に相当する関節が高い位置にあるわけではありません。どうやってもニワトリには成れません。恐竜=鳥類はヒトと同じ二足歩行ですが、姿勢は直立していません。姿勢は前に倒れています。
*そこで、足首を折り曲げます。それは自分の体重で折れ曲がります。すると、足指が出現します。
*足指は元々あるだろ。フジマツはアホか ! アホなことは認めますが、現代日本人は足指を使って歩きません。それでは無いも同然です。日本人の歩き方を元にしたホンダのアシモ君は、足指を完全に失ってしまいました。足指の無いアシモ君は現代日本人の真の姿なのです。
*心意六合拳・鶏歩と弓歩、宋氏形意拳の六合歩は、足首が折れ曲がることによって足指が出現します。すると、指行性に成ります。実際には、骨格は蹠行性なので隠れ指行性です。
*すると、下腿三頭筋の伸張性収縮が可能となります。なんか回りくどいですが、出発点は、足首が折れ曲がることです。ここから、蹠行性から指行性への変態が始まります。それは大きい運動ではなく、とても小さい運動でした。だから、見た目は解りません。とても見つけにくいのです。