反体重移動・武式太極拳から
*今回は、"絶対に体重移動してはいけない"のテーマを、武式太極拳(喬式太極拳) から見てみましょう。
*武式太極拳は弓歩に指行性の姿勢勁力があります。
*この弓歩の前足が流れてはいけません。流れると前のめりになります。相撲で譬えると、はたき込まれます。
*太極拳の推手で譬えると、流されてしまいます。そして、足を引っ掛けられて転んでしまいます。
*前のめりにならないためには、前膝の角度は垂直にします。それ以上、膝が前へ行かないようにします。
*そのためには、前足の指がカギとなります。前足の指はストッパーとなります。
*その時、前足の指に少しだけ体重が載ります。しかし、足指で地面をつかんではいけません。あくまで自分の体重を少しだけ利用します。足指で地面をつかむと、身体が浮いてしまいます。逆効果となります。
*なお、前のめりになる時は、自分の体重のほとんどが前足の指に載っている状態です。
*もちろん、これだけでは圧倒的に不足しています。これだけでは勁力が発生していません。
*勁力は後ろ足の足指から発生します。この勁力が無いと、前足の指のストッパーも無意味となります。
*この後ろ足の指も地面をつかんではいけません。それでは身体が浮いてしまいます。あくまで、自分の体重を利用するだけです。それ以上の筋力は要りません。普通の人は余計な筋力を使います。それで失敗します。
*足指を話題にすると、地面をつかむと誤解する人がたくさんいます。なんでだろう? とても不思議です。
*この足指は普段は眠っています。どうすれば起きてくれるのでしょうか?
*それは足首が折れ曲がることによって覚醒します。それによって体重が足指にかかります。
*それによって、隠れ指行性になります。
*それによって下腿三頭筋が覚醒します。
*いつも眠ってばかりの足指と下腿三頭筋が目を覚まします。
*これが、後ろ足の指行性勁力です。
*これは自分の体重を利用します。それだけのことです。普通の人は一生懸命に下腿三頭筋を使います。そんなことは逆効果です。もっと怠け者になりましょう。
*この後ろ足の下腿三頭筋が空っぽの状態が、普通の状態です。
*普通の人は大腿直筋で歩いてしまうので、常に下腿三頭筋が空っぽです。
*ウォーキングもランニングも大腿直筋で実行します。だから、それらはジャンプ運動となります。当然、身体は浮きます。
*楊式太極拳も大腿直筋で歩きます。だから、身体が浮きます。だから沈墜勁以外、選択肢はありません。
*沈墜勁は使わない、との発言に楊進がびっくりしたのも無理からぬところです。彼は他の世界に無知なのです。無知は同情すべきです。
*さて、体重移動してしまうと、後ろ足の下腿三頭筋が空っぽになります。下腿三頭筋にあった体重が消えてしまいます。体重は、大腿直筋へ移動します。勁力は死んでしまいます。
*通常の前のめり状態ではありませんが、姿勢勁力の立場から見ると、やはり前のめり状態です。
*通常の浮いた状態ではありませんが、姿勢勁力の立場から見ると、やはり浮いた状態です。
*そのようなわけで、武式太極拳の前手はそんなに伸びません。深追いはしません。深追いすると、身体が泳いでしまいます。
*ですから、通常の推手の距離では手が届きません。また、相手の進入を許さないので、武式太極拳では推手が成立しません。
*いわゆる体重を乗せた拳は、身体が泳いでいる状態というわけです。もちろん、姿勢勁力はこれを徹底的に嫌います。
*心意六合拳と宋氏形意拳も同様です。そのための鶏歩、六合歩というわけです。