腕の力と足の力
*先輩の拳を見たら、明らかに身体が浮いていました。一つは上半身に力が入っているので、足指まで体重が降りてきません。体幹と腕の問題です。
*もう一つは、地面を蹴ってしまうので、完全に浮いてしまいます。これが深刻な問題でした。勁力は死んでしまいます。
*それを見て、自分も歩けなくなりました。もちろん、自分も浮いていたのです。それはもう酷いもので、後に間違ってコボクマシーン1号にその当時の映像を見られてしまい笑われました。
*それで、歩くのをあきらめて、五行拳をひたすら六合歩の定歩で撃つことにしました。
*これは足の問題ですが、腕の問題もありました。
*腕にも力を入れてはいけないのです。特に、上腕二頭筋だけでなく、上腕三頭筋もいけません。
*上腕三頭筋は腕を伸ばす筋肉ですから、いいようなものですが。後に、心意六合拳の鉄牛耕地で自分の上腕三頭筋は力こぶができましたが。
*上腕二頭筋は相手を引き付ける時に使います。打撃には直接使いません。では、上腕三頭筋は? 無駄に力こぶができたのか?
*これはパンチング・ミットを撃つと解ります。相手を撃つと衝撃が跳ね返ってきます。反動が来ます。その反動を受け止めるために必要でした。
*結局、撃つためには前腕の筋肉が必要でした。上腕三頭筋も上腕二頭筋も直接は必要ありません。もちろん、武術のためには必要ですけど。
*この前腕の筋肉こそ、指の第一関節から先を緊張させる筋肉でした。前腕の筋肉で拳・掌を造ります。これが、心意六合拳の鷹爪です。そして、上腕の力は直接必要ありません。前腕と上腕を使い分けるのです。
*そしてもちろん、肩の力と胸の力を抜きます。これは大胸筋の問題です。心意六合拳の師匠に武術者には大胸筋は要らないと言われました。そんなに大きくする必要はない、とのことです。身体を見せるためには必要ですけど。
*鉄牛耕地では、表側の筋肉を付けることができません。大胸筋はできません。上腕二頭筋もあまり大きくなりません。前腕の筋肉も上腕三頭筋も衣服を着ていると解りません。小胸筋も前鋸筋も全く見えません。腹横筋も見えません。僧帽筋も目立ちません。(僧帽筋も打撃の際に壁になります。)
*心意六合拳の鶏歩でも、下腿三頭筋はそんなに太くなりません。内転筋は全く見えません。半腱半膜様筋も大腿二頭筋も裏側なので見えません。結局、見えない筋肉を造ります。
*地面を蹴ってはいけない、と宋氏形意拳で学びました。これも、自分で考えました。宋光華先生に指示されたわけではありません。(中国の先生は肝心なことを教えません。教える研究はほとんどしませんから。私も病気してから変化しました。)
*だから、心意六合拳の師匠の技で「伸びない後ろ足」を発見できました。陳先生が、後ろ足の踵を上げて降ろして見せてくれた時、指行性勁力をはっきりと理解できました。下腿三頭筋の伸張性収縮です。
*帰国して教えてみたら、みんな後ろ足の大腿直筋で地面を蹴ってしまいました。これ、見た目は変りません。ほとんど見分けできません。
*日頃、大腿直筋で地面を蹴って歩いていると気付きません。だから、心意六合拳はニワトリの指行性一本足に学んだのです。
*足の力については、大腿直筋の力をゆるめることが必要です。そうしないと下腿三頭筋が覚醒しません。
*腕の力については、腕を前鋸筋から生やすことが必要です。上腕三頭筋も上腕二頭筋も打撃の際はゆるめてしまいます。肩も胸もゆるめてしまいます。前腕の筋肉は軽く使います。これがふにゃふにゃ崩拳となります。
*心意六合拳の師匠に、熊吊膀(ゆうちょうぼう) はクマなんだから力は要らない、と言われました。クマは軽く腕=前肢を振っただけでヒトの身体をえぐってしまう。だから、それを真似して力を入れません。腕力ではありません。腕を力強く振り回している中国の先生もいますけど。(ツキノワグマよりもクロクマかグリズリーを想像してください。)
*腕力ではなく、体幹全部を使います。それが形意拳と心意六合拳の龍身と龍腰です。それを宋氏形意拳の龍形基本功と熊の基本功1号で学びます。ほとんど全ての人は肩が先行してしまいます。脇腹が主導します。そして、尻も入ります。尻を忘れてしまう人が多いようです。
*腕の力と足の力を抜きます。どのように抜くのか? それが課題となります。