*姿勢勁力の根本とは何か? それは、進めない力、です。歩けない力、です。
*回族の陳先生は、後ろ足の踵を上げて降ろしました。そして一言、「この勁で撃つ」と言いました。
*その時撃ったのが、ウソ単把だったのはご愛嬌ですけど。アハハ ウソ単把は、漫画「拳児」に出て来る心意六合拳の単把のことです。回族の先生が騙すスタンダードなニセ技のようです。原作者の故松田先生も私と同じようにからかわれたのです。私は別の回族の先生に、ニセ套路でからかわれたこともありました。
*しかし、陳先生の足の使い方には真実がありました。私はその夜、師匠の張克強先生に質問しました。しかし、一笑に付されてしまいました。
*ところが私には解ってしまいました。師匠も同じことをしている、と解ってしまいました。それは、陳先生の足の動きを内部運動としている、ということです。
*心意六合拳の鶏歩には、内部運動があります。内部運動だから、当然、外からは見えません。宋氏形意拳の六合歩(三体式) にも同じ内部運動があります。それはもちろん、目に見えません。
*その内部運動とは、進めない力、歩けない力、のことです。
*後ろ足の踵を降ろしたところで、進めません。歩けません。つまり、通常の運動ではありません。
*膝を伸ばすわけでもありません。膝を伸ばせば頭は上下します。地面を蹴るわけでもありません。それはランニングまたはウォーキングです。
*体重を乗せる拳、は進む力で撃ちます。歩く力で撃ちます。体重移動があるので、進む力、歩く力、のことです。
*鶏歩・六合歩の内部運動は、体重移動が無いので、進めない力・歩けない力なのです。
*それは、後ろ足裏側筋肉の伸張性収縮のことです。これでは進むことはできません。歩くことはできません。
*どうして鶏歩・鶏行歩と称するのか? ニワトリはゆっくりと歩く時、一本足で立ち止まります。それから足を降ろします。そしてまた一本足になります。この動きに着目したので、鶏歩・鶏行歩と称することになったのです。それが心意六合拳の始まりです。
*心意六合拳はこの見えない動きで撃ちます。宋氏形意拳はこの見えない動きで撃ちます。それは前進できない力です。
*宋氏形意拳の套路を観察していて、ある日気付きました。あれ? 前進していない? 歩いていない? ということに気付きました。宋氏形意拳の套路は、六合歩が連続しているだけです。全然歩いていません。なんてこった !
*心意六合拳の鶏行歩は、左右の鶏歩が交替しているだけです。前へ進んでいません。歩いていません。
*ではどうやって移動しているのか? それは足首が折れ曲がって指行性になることによって移動しているのです。その時、鶏歩の内部運動が起こっています。しかし、その内部運動は裏側筋肉の伸張性収縮です。それだけでは進めません。歩けません。
*でも、左右の鶏歩が交替するので、移動できるわけです。それを悟られないように、心意六合拳は勇猛果敢に表現するともいえます。
*しかし、宋氏形意拳は静かなものです。私は宋氏形意拳を先に学習したので、静かな力の存在に気がついていました。学習当時は表現できませんでしたけど。
*鶏行歩は連続する鶏歩です。鶏歩は進めない力なので、距離を稼ぐために大きい鶏歩になります。そのために足首が折れ曲がり、指行性になります。
*左右の足が交替する時、前足一本足状態になります。後ろ足は浮いています。そのために、見えない勁力運動は前足一本足状態から始まります。その前足はすぐに後ろ足になります。前足はまだ着地していません。前足は浮いています。勁力運動は続いています。
*後に学習した僑松茂先生の武式太極拳も、進めない太極拳、歩けない太極拳でした。その弓歩は、後ろ足裏側筋肉の伸張性収縮によって成立しています。
*この内容は、6・17心意形意出勁講習会で実技で解説します。
関係ない追伸・・・「京都ぎらい」井上章一 著、の続編が出ました。「京都ぎらい官能篇」です。面白そうです。
追伸・・・心意六合拳・鶏行歩の理解がなぜ難しいのか? 鶏行歩には、進めない運動、歩けない運動が含まれているからです。